ヨーロッパでは温泉(鉱泉)といえば、真っ先に飲泉を連想するほど「温泉を飲むこと」はよく知られています。
温泉を天然の〝クスリ〟に見立てた発想
「温泉は飲む野菜」ともいわれるほど、ヨーロッパの温泉保養地では飲泉は温泉療法の基本とされています。温泉にはさまざまなミネラルが豊富に含まれているからです。アジアでも温泉療法に医療保険が適応されるモンゴルでは、専門の医師の指導のもと、飲泉療法が盛んに行われています。
これは含有成分を余すことなく体内に取り入れるという、温泉を天然の”クスリ”に見立てた発想です。現代医学(ヨーロッパ医学)はクスリで治す治療医学であることを考えると、ヨーロッパの温泉保養地で飲泉が盛んなのは納得できます。温度の低い炭酸泉(二酸化炭素泉)が多かったことなども、浴用よりも飲用での利用が多い理由だと考えられます
日本では明治9(1876)年にヨーロッパ医学を指導に来日したドイツ人医師、ベルツ(1849-1913)の影響で、飲泉が広まり、明治から大正、昭和にかけて、温泉場では”飲み湯”という言葉が定着しました。