今回の俵山での湯治は、温泉分析表をみるかぎりではこれといった濃厚な成分が認められないアルカリ性単純温泉が、なぜ永年にわたって神経痛やリウマチの名湯といわれてきたのかを知りたいという目的もありました。
日本温泉科学会の第3代会長を務めた九州帝国大学(当時)の高安慎一教授は、昭和4年、俵山での講演において、含有成分からみれば、とくに俵山温泉などではその固形成分が医者が治療に使う薬剤量に比べ非常に少ないことから軽視されているが、これは早飲み込みであるとしたうえで、次のように述べています。
「固形成分の少なさの数を以って一概に温泉は効果の上に否定的なものであると申すことができぬのであります」
高安教授は、さらに温泉の効果は、ヨーロッパや中国で古くから行われている、非常に僅かな量の薬を使用することで病気を癒す“ホメオパシー”という療法にも通じる作用があると力説しました。
温泉健康楽 第13回 「 温泉の個性 」
