〝予防医学〟として有効な温泉の活用
これまで温泉の真価はもっぱらその含有成分にあると考えられてきた。温泉水に含まれるさまざまなミネラルが薬のように身体に作用するとの見方である。
ヨーロッパ(現代)医学の真骨頂は薬による薬理作用である。従って、ヨーロッパの温泉医学が温泉の効能を、その含有成分に求めてきた理由は十分に納得できる。
しかし、ヨーロッパ(現代)医学がこれほど発達した現代において、温泉はそのわずかに含有される成分によってのみ、ヨーロッパ医学が治癒できない生活習慣病のような慢性病を治癒してきたのであろうか? たとえば頑固な腰痛を回復させてきたのであろうか? アトピー性皮膚炎を治してきたのだろうか?
ヨーロッパ(現代)医学の特徴は改めていうまでもなく、「対症療法」である。発熱には解熱剤、痛みには鎮痛剤、炎症には抗炎症剤というように。その症状の原因となるものを正したり治したりせず、発熱、痛み、炎症といった表面の現象を押さえ込むことを得手とする。即効性があるともいえる。だが、同じ症状を繰り返すうちに、慢性化して、対応できなくなることも多い。