温泉を、極める! 第27回 正しい温泉の入り方とは

贅沢なかけ湯で、清々しい気分になる

 前回、入浴マナー違反について苦言を呈しました。ここでは温泉の入り方について改めて考えてみます。
 浴槽に入る前に、かけ湯をして汚いところを流す。これは家庭風呂でも常識ですね。ましてや温泉は赤の他人と湯を共有する場です。温泉の場合は、下半身などは洗い場のシャワーでしっかり洗い流してもいいのですが、私は日本の伝統的な流儀に則って桶を片手に浴槽に直行します。浴槽の縁に桶を置いてある場合は、「ここの経営者は入浴に対する素養がある」と考えて、このような風呂に出合えたことの幸運を素直に喜びたいものです。
 温泉浴場は家庭風呂とは違って、ホンモノの温泉なら新鮮な湯がどんどんかけ流されているはずです。お湯はふんだんに使いましょう。それが温泉の醍醐味でもあったわけですから、贅沢に7、8杯、できれば10杯はたっぷりとかけ湯をしたいものです。天与の恵みに感謝しながら、”温泉天国”日本に住んでいることの幸せを感じながら―。きっと心まで洗われるような清々しい気分になることでしょう。

浴槽の湯の温度と自分の体を反応させ、身を守る

 最初は心臓からもっとも遠いところ、そう足からです。下半身はただ流すだけではなく、手か手拭いで汚れも落とすつもりで、下から順に上へと、のぼせる心配があったらタオルを頭にのせて数杯、しっかりかぶり湯をする。昔の日本人は長湯好きでしたから、10杯、20杯はかぶり湯をしたようです。
 かけ湯にはもっと大切な意味があります。これから入る浴槽の湯の温度と自分の体を反応させ、急激な血圧の上昇から身を守るためです。家庭風呂では年間1万5,000人以上の人びとが死亡していると言われています。これは主に厳寒期の温度変化によるものです。家庭の脱衣場や風呂場は寒く、湯温は高いため、特に中高年の人の血圧が急激に上下するためです。
 したがって、冬場は直接露天風呂に向かわず、内風呂にゆっくり浸かってから、露天風呂はおまけで楽しむぐらいのスタンスがいいでしょう。冬の露天風呂は冷えるので、温度が高めに設定されていることが多く、外気との温度差で血圧が急変し、心臓や脳の発作につながることがあります。黒川温泉(熊本県)の有名旅館の大露天風呂で、真冬に現役の知事が亡くなったことがありました。 

源泉かけ流しなら、上がる際にシャワーを浴びない

 タオルを浴槽に入れない、これも基本マナーですね。女性風呂では浴槽内でのタオルの使用の苦情がよく寄せられます。タオル、バスタオルの使用は不潔で、他人に迷惑をかける行為です。
 体や髪を洗うことは温泉の主目的ではありませんね。温泉へ行ったときぐらいは石けんを使わなくても、ホンモノの温泉に浸かっていると、皮膚の表面の角質の汚れは除けます。皮脂と温泉成分で天然の石けんが出来るのです。温泉で泡立てすぎると、上がってからむしろかさかさになることがあります。
 頭の方は私は近くに誰もいなく他人に迷惑をかけない時は、桶で湯を汲み頭に何倍もかけます。先日も信州の野沢温泉の湯を50杯かけました。猛暑のなか、汗をかいてもちっともかゆくなりません。
 もちろん上がる際にはシャワーを浴びない。せっかくの温泉成分を流すのはもったいない。水を沸かしたシャワーのお湯には酸化剤である強烈な塩素が入っているため、せっかく源泉かけ流しの湯に浸かっても台無しになりかねません。そうそう、温泉を頭にかけるのはもちろん、源泉かけ流しの湯の場合だけです。念のため、つけ加えておきます。
 ただし、同じ湯を何度も使い回す、塩素殺菌された循環湯に入ってしまった時は、しっかりとシャワーで洗い流してから上がりましょう。浴槽の塩素濃度に比べるとシャワーの塩素の方がまだましでしょう。

湯上がりには常温のミネラルウォーターやお茶を

 湯上がりに喉が渇いた場合は夏でもないかぎり、冷たい物ではなく、常温のミネラルウォーターかお茶を飲むようにしたいものですね。体を温めると副交感神経が優位になり、免疫力が高まることが確認されています。細菌やウイルスを殺す免疫細胞の約70%が腸にあります。湯上がり直後に胃腸に冷えた飲み物を流し込むのはもったいないことです。

テキストのコピーはできません。
タイトルとURLをコピーしました