お湯が張られた「湯」は温泉の呼称でもあった
湯女風呂のように蒸気で垢(あか)を落とす「風呂」に対して、「湯」が現代の私たちになじみのある風呂を指していました。「風呂場」のことを古くは「湯殿」といったのも、そうした移行を感じさせる言葉です。お湯が張られたところが、まさしく「湯」だったというわけです。
『万葉集』などにも出てきますが、温泉もまた「ゆ」と読みました。その名残がいまも島根県に湧く「温泉津」。「おんせんつ」ではなく、「ゆのつ」ですね。温泉津は江戸時代には、平成19(2007)年に世界文化遺産登録された石見(いわみ)銀山の積み出し港としても栄え、そのはるか昔、奈良時代の記録にも出てくる古湯です。

に選定されているいぶし銀の温泉街である(撮影:松田忠徳)

撮影:松田忠徳)