「温泉を、極める!」 第24回 ”湯”を施す「施浴」文化

お湯が張られた「湯」は温泉の呼称でもあった

 湯女風呂のように蒸気で垢(あか)を落とす「風呂」に対して、「湯」が現代の私たちになじみのある風呂を指していました。「風呂場」のことを古くは「湯殿」といったのも、そうした移行を感じさせる言葉です。お湯が張られたところが、まさしく「湯」だったというわけです。
 『万葉集』などにも出てきますが、温泉もまた「ゆ」と読みました。その名残がいまも島根県に湧く「温泉津」。「おんせんつ」ではなく、「ゆのつ」ですね。温泉津は江戸時代には、平成19(2007)年に世界文化遺産登録された石見(いわみ)銀山の積み出し港としても栄え、そのはるか昔、奈良時代の記録にも出てくる古湯です。

開湯1300年前と伝わる温泉津温泉の一角。「国の重要伝統的建造物群保存地区」
に選定されているいぶし銀の温泉街である(撮影:松田忠徳)

温泉津温泉は茶色の湯で知られる。藥師湯は温泉街に2軒ある日帰り温泉のひとつ(
撮影:松田忠徳)

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