温泉教授・松田忠徳の〝温泉本〟案内 第五回 癒しの原風景としての歴史ある温泉地を巡る 温泉教授・松田忠徳の『古湯を歩く』

さまざまな情報が瞬時に行き交い、経済がグローバル化するなかで、価値観やものの考え方にまで欧米化、均質化が進んでいる。その一方で、戦後の日本を生きてきた世代にとっては、経済成長の過程で失ってきたもの、ことに日本的なものへのノスタルジー、懐古志向が強まっていることも確かだ。二度と戻っては来ない風景や習俗を懐かしむと同時に、昔ながらの良さを見直して復活させていく、それを不安感が漂う時代の処方箋として役立てようとする動きも出てきている。
 日本らしさの代表ともいえる温泉は、心と身体の癒しの場として機能してきたことが大きな特徴だが、それは単に湯の効能だけではなく、そこに癒しの原風景としての“温泉地”があったからこそ、とするのが本書の視点だ。そのキーワードとなっているのが、タイトルにある「古湯」。ただ歴史があるというだけでなく、日本の温泉地の成り立ちと仕掛けに注目し、かつての姿を残す「古湯」を筆者はまさに“歩いて”いる。とはいえ懐古趣味ではない。その温泉地を伝えていく若い世代をも意識し、魅力を掘り起こしていくことが主眼だ。

—-“古湯”と聞くと、何となくイメージは湧くのですが、そもそも本書で定義している“古湯”とはどういうものですか?。

松田 ひとことで言えば長い歴史があり、かつそれが現代にまで受け継がれている温泉地ということになるでしょうか。本来の温泉地が持つ装置を兼ね備えている、残っている場所と言ってもいいかも知れません。

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