温泉教授・松田忠徳の〝温泉本〟案内 第二回 庶民と温泉の関わり、温泉医学の原点を繙く 『江戸の温泉学』への思い

江戸ものブームの熱が醒めない。人情もの、勧善懲悪、ミステリーなどの小説や、生活・風俗・文化の紹介本、果ては和風建築や着物人気まで、今から見ればどこかのんびりして豊かなイメージが憧れの対象となっている。暮らしから経済、政治にいたる社会構造の礎になったと言われるこの時代はまた、温泉が庶民に定着し、日本の文化として敷衍していく端緒となる事象が数多く見られる。
 病を癒す医療としての湯治に始まり、旅行ブームのきっかけとなった温泉は、400年を経た今もますます拡大しつつ活況に見えるが、その一方で、温泉本来のよさが忘れられ、当たり前だったはずの付き合い方ができなくなっている—-。江戸という時代における温泉を俯瞰しつつ、温泉の未来への視点を喚起させる、新しい「江戸学」について聞いた。

—-この本は、週刊誌での連載が元になっているそうですね。

松田 週刊新潮で1年間、50回連載した「江戸温泉物語」をまとめて、再構成しています。当初は新潮選書として書き下ろす予定だったのですが、大学での講義のほか、毎週のように講演・取材に出ている関係でまとまった時間が取りにくいことから、連載という形で書き溜めていくことになりました。しかし結果的には、この方法を採ったことが良かったと思っています。

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