温泉旅館・ホテルを紹介するガイド本はいくつもある。雑誌や、また、テレビでも折々に、さまざまな宿をとり上げ、消費者に訴求する企画が組まれる。演出された写真や映像、心をくすぐる紹介コメント。そこに惹かれて宿を選び、あるいは、いつかは行きたいと憧れる。けれども、その評価基準が公平で明快なものでないとしたら—-。 これまで曖昧にされてきた温泉旅館の評価を、①湯質と風呂評価(10点)、②料理評価(5点)、③サービスや雰囲気評価(5点)、④値段の適正さ評価(5点)の四つの基準にもとづき、374軒について25点満点で「格付」したのが『温泉旅館格付けガイド』(新潮社)だ。宿選びに新しい視点を投じた、その背景を語る。
—-そもそも、このガイド本を著した目的は?
松田 たとえば欧米のホテルであれば、グレードというものが厳然とあって、料金はそのクラスと部屋の広さなどで明快に決まっています。ところが、同じ宿泊施設でありながら日本の温泉旅館は、その辺りが非常に分かりづらい。
広さなのか、料理なのか、建物の質なのか。日本的、といえば日本的なのですが(笑)、さまざまな分野で情報公開が進み、消費者への判断基準が示されている今の時代にあっては、もはやそれでは通用しないだろうと。そこで、温泉旅館を選んでいく時の基準をきちんと盛り込んだガイドをまとめることで、安心して温泉を楽しみ、また、温泉旅館にとっては厳しい評価の目に晒されることでグレードアップしていって欲しい。そんな思いがまず、ありました。