”温泉教授”の毎日が温泉 第62回 ”都会型温泉”で、肌の若返りは可能か ~「きぬの湯」(茨城県)での実証実験(その5)

心身の健康力を高め、真の美肌をつくる温泉

露天風呂「四季の湯」(写真:「天然温泉 きぬの湯」提供)

 ヒトの皮膚水分量の基準値には開きがあり、おおよそ10~60%と言われている。乳幼児の水分量は80%であるから、さすがにみずみずしい。一般に大人の男性で60%、女性で55%程度と言われいる。また加齢(エージング)とともに水分量が減少することが知られており、老いるということは枯れると言うことでもある。
 乳幼児の水分量の多さに象徴されるように水分量が多く、みずみずしい肌を保つということは「若さの象徴」でもあるから、特に世の女性たちがみずみずしい肌を求めるのは至極当然のことかもしれない。
 ただ、「日本人にとっての固有の”美肌サプリメント”は古来、天然の温泉(源泉)であった」ということを、再認識していただきたい。まさしく日本人にとって、温故知新である。
 温泉とスキンケア化粧品との決定的な違いは、温泉は心身の健康力を高めることによって、内からも美肌力、美白力を磨き上げることであろう。見せかけではなく真の美肌を作り出すのである。もちろん温泉に含まれる天然由来の科学的成分は化粧品に勝るとも劣らぬ美肌力、美白力をもつ。 

猛暑日、酷暑日のなか、水分量の実証実験

 これまでのモニターによる実証実験からも、温泉泉質や湯温、入浴法などによっては、一般に活発な発汗作用を伴う温泉浴で皮膚の水分量を増やすことはかなり難しいことが判明している。「天然温泉 きぬの湯」ではどうだったか。
 6月上旬から8月下旬の猛暑日、酷暑日が続く真夏の最中の実証実験となった。

◇手甲水分量を測定する

(1)週1回通い湯治モニター
湯治前が41.3±9.8 %で湯治後が44.2±10.3 %と増加傾向 (p=0.45)となった。(増加する方が良い)
  
(2)週2回通い湯治モニタ-
湯治前が36.3±7.2 %で湯治後が42.9±12.4 %と増加傾向 (p=0.07)となった。(増加する方が良い)

【図表1】週1回通い湯治モニター
【図表2】週2回通い湯治モニター

以下に各群のモニターにおける個別データを示す。

【図表3】「週1回通い湯治モニター」男性
【図表4】「週1回通い湯治モニター」女性
【図表5】「週2回通い湯治モニター」男性
【図表6】「週2回通い湯治モニター」女性

 ◇頬の水分量を測定する

(1)週1回通い湯治モニター
湯治前が43.2±9.2 %で湯治後が39.5±6.8 %と減少傾向(p=0.21)となった。(0.9%の減少。増加する方が良い)

(2)週2回通い湯治モニター
湯治前が42.9±8.0 %で湯治後が41.5±9.1 %と減少傾向(p=0.61)となった。(0.3%の減少。増加する方が良い)

【図表7】「週1回通い湯治モニター」男性
【図表8】「週1回通い湯治モニター」女性
【図表9】「週2回通い湯治モニター」男性
【図表10】「週2回通い湯治モニター」女性

 「週1回モニター」、「週2回モニター」ともに手甲の水分量が増加した。「週1回モニター」で約7%増、「週2回モニター」では約18%の増加

 これまでの各地で実施したモニターによる実証実験結果からも、活発な発汗作用を伴う温泉入浴で皮膚の水分量を増やすことは、自己流の入浴法ではかなり難しいことが判明している。
 今回、手の甲では「週1回通い湯治モニタ-」、「週2回通い湯治モニター」ともに増加した。「週1回通い湯治モニター」ではモニター平均で約7%増加した。また、「週2回通い湯治モニター」群では約18%も増加を見た。
 手甲の水分量を増やすこともなかなか難しいことであるから、「きぬの湯」の泉質、湯温によるところ大であったと思われる。
 一方、猛暑日が続いたなか、顔の水分量は若干の減少。「週1回モニター」は平均約8.6%、「週2回モニター」は3分の1以下の約3.3%の減少となった。
 手の甲では水分量は増加したものの、頬の水分量では両群ともに若干ではあるが、減少傾向を示す結果となった。     
  皮膚の乾燥は外気の湿度の増減に敏感に反応する。秋や冬は外気が乾燥し、皮膚も乾燥肌になりがちなことは誰しもが実感している。
 また、外気ばかりでなく、夏の室内の空調(冷房)によっても簡単に左右される。冷房を使用する時間・期間が長いためどうしても室内は乾燥しがちである。特に「きぬの湯」(茨城県常総市)で実証調査を行った2年前(2018年)もそうだったが、最近の夏は猛暑日、酷暑日が続く。特に女性は顔の皮膚が薄いため、水分が蒸発しやすいので注意しなければならない。
 こうしたことを考慮すると、猛暑日が続いた2年前の夏は定期的に温泉で入浴をしていたから、皮膚を守ることが出来たとも考えられる。「週1回通い湯治モニター」群の手甲の水分量が約7%の増加であったのに対して、入浴回数の多い「週2回通い湯治モニター」群の方は約2.5倍の18%の増加であった。
 また、顔の水分量では「週1回通い湯治モニター」は約0.9%の減少であったのに対して、入浴機会の多い「週2回通い湯治モニター」は3分の1の約0.3%の減少ですんでいることにヒントがあるとも考えられる。

美肌に効果的な“ぬる湯”、熱湯は分割入浴で

 私共の全国600名に及ぶモニターの実証実験の結果から、”ぬる湯”は美肌に効果的である。
 入浴の際に注意しなければならないことは、熱湯で長湯、浸かり過ぎないこと。分割入浴をお薦めしたい。石けん、ボディーソープ等で洗い過ぎないこと。うるおいの角質層を守る、水分の発散を防ぐ防波堤の役割をしている脂皮膜が流されると、皮膚は乾燥することになる。
 私たちの体の皮脂と温泉成分ですでに天然の石けんが出来上がっているので、還元系の本物の温泉ではあえて体を洗い流さなくてもいいだろう。洗う必要がある場合はいつもより軽く流す程度で十分である。湯上がり後、10~15分以内には保湿剤等を使う。

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