血流量を増やして、代謝を促進する
人の血管の長さは地球2周半分に相当する約10万キロにも及ぶ。そのうち毛細血管は約95%を占めると言われている。

「肌は内臓の鏡」とも言われるように、体の外側にある皮膚は毛細血管の状態をもろに反映している。毛細血管の数は加齢とともに減少していくが、血流の状態が悪ければ、顔の毛細血管にも栄養分や新しい酸素が十分に供給されず、また老廃物も回収されずに滞る。その結果、生気のない不健康な肌となる。
持続的な温泉浴による、末梢血管の血流速度の変化を検証した。末梢血管とは一般的に足や腕の血管を指す。
引き続き首都圏の「天然温泉 きぬの湯」における実証実験結果である。「週1回通い湯治モニター」は14名、「週2回通い湯治モニター」は13名である。
温泉浴による抹消血管の血流速度の変化を検証した。
1)最高(収縮期)血流速度
(1)週1回通い湯治モニター
湯治前が5.8±3.3 cm/secで湯治後が11.5±4.6 cm/secと有意に上昇 (p<0.01)した。(有意に上昇するのは理想的)
(2)週2回通い湯治モニター
湯治前が7.0±3.0 cm/secで湯治後が10.7±4.1 cm/secと有意に上昇 (p<0.05)した。(有意に上昇するのは理想的)


2) 平均血流速度
(1)週1回通い湯治モニター
湯治前が1.9±1.7 cm/secで湯治後が5.0±2.9 cm/secと有意に上昇 (p<0.01)した。(有意に上昇するのは理想的)
(2)週2回通い湯治モニター
湯治前が1.8±1.4 cm/secで湯治後が4.5±3.3 cm/secと有意に上昇 (p<0.05)した。(有意に上昇するのは理想的)


両群のモニターは最高血流速度、平均血流速度とも有意に上昇を示した。湯治開始前に比べ、「週1回通い湯治モニター」は約2.6倍、「週2回通い湯治モニター」は2.5倍の上昇となった。
機序は温泉の保温効果による血管拡張にともなう血液の流れやすさと、入浴によるリラックス効果が考えられる。即ち、入浴により副交感神経系が優位になり動脈平滑筋細胞の弛緩が起こることで末梢血管抵抗が減少し、血流量が増加したと考えられる。
健康・美容に繋がる血流改善には温泉が一番
皮膚は表皮、真皮、皮下組織の3層構造になっている。なかでも最前線の役割を担っているのが表皮である。強い刺激や異物の侵入を阻止したり、水分の蒸発を防ぐ”バリア”の役割を務めている。わずか0.2ミリの非常に薄い膜で、ここには毛細血管もリンパ管もない。
表皮はよく知られている角質層、及び顆粒(かりゅう)層、有棘(ゆうきょく)層、基底層の4層から成っている。基底層の下が基底膜を介して、真皮である。
基底層では毎日新しい細胞(ケラチノサイト=角化細胞)がつくられ、後からつくられる細胞に押し上げられる形で成長しながら角質層に達し、最後は垢として剥げ落ちる。このことを”ターンオーバー”と言う。この間、約1か月。ターンオーバーの原動力となるのが真皮の毛細血管なのである。
したがって毛細血管の血流が滞り、新陳代謝が活発に行われなければ、角質層は古い角質でこわばってくる。ターンオーバーが遅れる一番の原因は冷え。次に運動不足、ストレス等。その結果、血液、リンパ液の流れが悪くなり、皮膚細胞が栄養不足や酸素不足に陥る。
冷えやストレスの解消には温泉浴が一番である。血行が促進され、細胞が活性化する。もちろんそのために、最も大切な質の良い睡眠がとれるようにもなる。