温泉はその由来が火山性か非火山性かにかかわらず、地中深く無酸素状態の環境下で誕生することに着目する必要がある。すなわち温泉水は”還元状態”にある。このことは温泉の本質を理解するうえで極めて重要なことと考えられる。
数キロから十数キロも地中深くで生成された温泉。この生命力を有した熱水は長い歳月をかけて地表に湧出し、大気中の酸素(20.9%)にふれて、酸化され、徐々に、あるいは急速に温泉本来の生命力(活性)を失う。これを温泉の”エイジング”、”老化現象”と称する。

〝経験温泉学〟的に理解されていた温泉の活性
温泉にもっぱら”温泉気分”しか求めない現代人と違って、昔の日本人は温泉の活性を”経験温泉学”的に理解していた。だから昔は、「温泉は浴槽の湯口の近くでなければ効果がない」といわれたものだ。私も温泉街で生まれ育ったので、幼い頃からこの言葉は耳にたこができるほど聞かされものだ。