台北市の北、北投温泉のすぐ東に、日本では見られない形態の温泉街がある。温泉街といっても北投温泉のように施設が密集しているわけではなく、日本風に表現すると山裾の谷間に”温泉付レストラン”が点在しているのである。その数、20軒以上といわれる。
宿泊施設なしの〝温泉レストラン〟
”温泉レストラン”は食事を楽しみながら、合間に温泉入浴をしたり、カラオケに興じる施設である。日本でも個室で昼食付き入浴はよく見受けられし、箱根湯本温泉などのように一部の温泉地では日帰りで夕食と入浴を楽しめる宿もあったりするが、行義路温泉の場合は宿泊施設はない。共同浴場もない。
すべての施設が立派な温泉を併設したレストランなのである。近くの山に因んで紗帽山温泉と呼ぶこともあるようだ。
どこの施設も駐車場のスペースがたっぷりとられているところを見ると、台北市内はじめ近隣から車で来る人が多いのだろう。行義路でも一番人気の「川湯」の創業は1998年と比較的新しいから、台湾人でもまだ行義路温泉の名前を知らない人は多いようだ。
「川湯」は日本の公衆浴場、しかも男女別に裸で入浴する文化を初めて行義路温泉地区に導入した草分けだという。