温泉を、極める! 第25回 混浴風呂での目線は?

銭湯代わりの混浴浴場で大人の所作に学ぶ

 「どうしてそんなに温泉にこだわるのですか?」と、よく質問されたものです。
そんなときは決まって、「洞爺湖温泉で産湯をつかい、生家の近くの混浴の共同浴場を揺りかご代わりに育ったからですよ」と答えたものです。幼いころは、母親に連れられて当時数軒あった共同風呂に入り、混浴浴場が銭湯代わりだっただけのことです。
 かつて銭湯は情報の受信、発信の場でした。入浴の基本的なマナーだって、大人たちから学びました。言葉ではなく、大人たちの所作を見て体で覚えたのです。
 女性が入ってきたら視線をそらすことも、自然に会得したものです。「日常茶飯事で慣れているから、見るまでもないでしょう」と皆は疑うのですが、事実、自然と目をそらすようになりました。私は幼かったので体で覚えましたが、理屈で考えば、もっと早く、自然と目をそむけることが出来るでしょう。
 女性のシルエットが見えたら、横を向いたり、誰か他の人に話しかけて、そちらを見ないようにする。むしろ風呂に入ってきたあとが大切で、今度は視線をそらさず、きちんと女性と目を合わせながら何気ない会話を楽しむ。男性、とくにおじさんたちにとっては、これがなかなか難しいんですね。
 もっとも、私がよく知っている”モデライター(モデル兼ライター)”嬢に言わせると、現在70代になる”団塊世代”が一番混浴マナーが良いとのこと。団塊世代への風当たりが何かと強いだけに、思わず鼻の下を長くしてしまいそうですね。

わが子との家庭風呂での付き合いをおざなりにしたツケ

 以前、青森の「東奥日報」紙から、混浴に関する取材がありました。わが国を代表する湯治場、酸ヶ湯温泉は「ヒバ千人風呂」の大混浴浴場で有名ですが、都会から来た一部の男性たちのマナーが悪く、江戸時代から続く混浴風呂が存亡の危機にあるというのです。
 実は酸ヶ湯温泉の経営陣から、数年越しで混浴風呂に仕切りを入れるべきか否かの相談も受けておりました。病的とも思える一部の若い男性のマナーの悪さが湯治文化を崩壊の危機に追いやっていたのです。
 ”スキンシップ”と言う言葉を聞かなくなって、ずいぶん久しいですが、忙しさにかまけてわが子との家庭風呂での付き合いをおざなりにしてきた”ツケ”が、温泉文化、湯治文化のデストロイヤー(破壊者)に変身させてしまったのでしょうか? 現実的にはもう家庭風呂に浸かるひとは少数派で、ほとんどが欧米のようにシャワー派になってしまっているのでしょうか? 日本人の低体温化が著しく進んでいるところを鑑みると、もう親子で浴槽に浸かる”スキンシップ”云々の問題ではないのかも知れませんね。 

女子学生たちの大胆かつ繊細な心遣い 

 大学のゼミで混浴についてどのようなモラル、マナーが必要か討論したことがありました。意外にも女子学生の多くは、タオルや手拭いを持たずに入ることは恥ずかしくないようです。もともと湯の中にはタオルを入れないのがマナーですから、初めからタオルはない方がいいと考えるようです。
 タオルで前を隠したがるのは、日本人としてきわめて自然な所作だと思われますが、少なくとも湯船に浸かったら、ない方がいいというのが大半の意見。彼女たちの大胆かつ繊細な心遣いには感心させられます。

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