銭湯代わりの混浴浴場で大人の所作に学ぶ
「どうしてそんなに温泉にこだわるのですか?」と、よく質問されたものです。
そんなときは決まって、「洞爺湖温泉で産湯をつかい、生家の近くの混浴の共同浴場を揺りかご代わりに育ったからですよ」と答えたものです。幼いころは、母親に連れられて当時数軒あった共同風呂に入り、混浴浴場が銭湯代わりだっただけのことです。
かつて銭湯は情報の受信、発信の場でした。入浴の基本的なマナーだって、大人たちから学びました。言葉ではなく、大人たちの所作を見て体で覚えたのです。
女性が入ってきたら視線をそらすことも、自然に会得したものです。「日常茶飯事で慣れているから、見るまでもないでしょう」と皆は疑うのですが、事実、自然と目をそらすようになりました。私は幼かったので体で覚えましたが、理屈で考えば、もっと早く、自然と目をそむけることが出来るでしょう。
女性のシルエットが見えたら、横を向いたり、誰か他の人に話しかけて、そちらを見ないようにする。むしろ風呂に入ってきたあとが大切で、今度は視線をそらさず、きちんと女性と目を合わせながら何気ない会話を楽しむ。男性、とくにおじさんたちにとっては、これがなかなか難しいんですね。
もっとも、私がよく知っている”モデライター(モデル兼ライター)”嬢に言わせると、現在70代になる”団塊世代”が一番混浴マナーが良いとのこと。団塊世代への風当たりが何かと強いだけに、思わず鼻の下を長くしてしまいそうですね。