"麗しの温泉・浮島"台湾 プロローグ 温泉 × 異文化という新しい魅力を発見

北投温泉の湯元、「地熱谷」(撮影:松田忠徳)

国内旅行の感覚でプチ湯治が楽しめる!?


 日本人にとって”温泉浴は裸”で、は常識。だが、世界では非常識である。水着をつけての入浴はどうしても馴染めない、落ち着かないという日本人が多いのも当然だ。私もその一人だ。
 日本人には世知辛い世界の温泉、ところが日本から3時間で行ける台湾に、日本と同じように裸で入浴できる温泉がある。東京から台北まで3時間30分、大阪から2時間40分、名古屋から3時間、札幌から3時間40分、福岡から2時間20分、沖縄からなら僅か1時間30分。復路はジェット気流に乗りさらに短い。福岡からなら、驚くことに札幌に行くより近い!

シンガポ-ルのLCCスクート。日本~台北間にも就航中(撮影:松田忠徳)

 ましてやLCC(格安航空)全盛の昨今、海外といっても交通費は国内よりリーズナブルなことが多い。実際、東京、大阪からなら往復で1万5000円前後から航空券が入手できる。2、3泊のホテル付きでも2万円前後からある。台北駅から台湾を代表する大温泉地、北投温泉まで快適なMRT(Mass Rapid Transit)で30分余、わずか片道35元(約105円)という安さだ。ちなみに台北市内を網羅するMRTは”台北メトロ”とも呼ばれるが、郊外では高架を走る。
 台北駅から1時間圏内の近場の温泉には、硫黄泉など泉質的に優れた温泉を有する北投温泉、陽明山温泉(日本統治時代の草山温泉)、行義路温泉などがあり、週末を利用して非日常の環境で2~4泊のプチ湯治をリーズナブルな料金で楽しむ時代に入ったと考えてもよいだろう。もちろん週末の1泊旅行も国内旅行の感覚で異文化を体験できる恵まれた時代の到来である

台湾における温泉開発と”日式”の浴場

 台湾の温泉も混浴露天風呂などは基本的に水着着用である。ただ戦前からの影響で”日式”の裸で入浴する男女別の浴場がある。また最近は”日式”の浴場がふえる傾向にあるのは日本人には嬉しい。
 台湾には温泉公衆浴場から露天風呂付きの部屋を備えた高級旅館、スパリゾートまで、日本と似た形態の施設がほとんどだ。しかも温泉街を形成しているのも日本仕込みである。
 これには半世紀に及ぶ日本統治時代が大きく影響していると思われる。1895年から世界大戦で敗戦した1945年までのちょうど50年間、日本は台湾を統治している。
 もともと台湾には温泉は豊富だったが、人前で裸になる習わしのなかった中国や台湾では、日本のように日常的に温泉に浸かることはなかったに違いない。
 1896年に大阪出身の平田源吾が北投温泉に温泉旅館「天狗庵」を開業したのが、台湾における温泉開発の始まりと言われている。

個性的な”効く”温泉も多い台湾を訪ねて

 1998年1月から翌99年9月にかけて、私は”列島縦断2500湯”の旅を完遂した。そのとき日本列島は”温泉の浮島”だと、身をもって感じたことを懐かしく思い出す。
 台湾は九州より少し小さなさつまいもの形をした島で、じつは"浮島"という呼称は台湾にこそふさわしいと感じている。しかも台湾には3000メートル級の山が数座あり、なかには富士山より高い玉山(3,952m)もあるから、浮島は変化に富んでいる。また台湾は日本列島と同じように火山島で硫黄泉、酸性泉という個性的な”効く”温泉も多い。
 台北の北から、高雄の南まで温泉が湧く。現在の温泉地の多くは自然湧出泉だが、火山島で降水量も多いだけに、掘削すると島の至る所から新たな温泉源が得られる可能性もある。
 今後、私の「”麗しの温泉・浮島”台湾紀行」を随時紹介していきたい。初回と次回はアジアを代表する温泉、北投である。

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