「ウーライ温泉」と読む。
台湾各地の観光案内所のパンフ類には必ずといっていいほど日本語版もあり、日本人の旅行者には大変ありがたい。
ここ烏来温泉のある新北市の使い勝手の良いリーフレットに、「烏来の語源はタイヤル族の”水蒸気が立ち上る湧き水”を意味する古語からきている」と説明されている。台湾北中部の中央山脈に暮らす原住民タイヤル族の「温泉」を意味する言葉に由来するのだという。ということは、烏来の温泉と現地の人々との関わりの歴史はかなり古くから始まっていたということが想像できる。

オーストロネシア語族の原郷の地、台湾
台湾は中国大陸から漢民族(外来者)が移住して成立した国・地域との誤った認識の日本人や外国人は少なくない。台湾には約3~5万年前の旧石器時代からヒトが住み、中国大陸から漢民族が台湾へ移住し始める16世紀後半以前には、主に東南アジア系と見られるオーストロネシア語族が”台湾原住民”として生活していた。”原住民”という呼称は近年、彼ら自身が誇りをもって名乗り、台湾社会でも定着しているので、ここでもその呼称を尊重して使わせていただくことにした。
ちなみに日本では南島語族とも訳されるオーストロネシア語族は近年の言語学の研究では、台湾原住民諸語との類縁性が証明され、台湾はこの語族の”原郷”と考えられている。また考古学的な研究と併せると、オーストロネシア語族は、台湾からフィリピン、インドネシア、マレーシア、インドシナ半島などの東南アジア島嶼部に南下し、5世紀以降に西のインド洋上のマダガスカル島や東のイースター島に至る太平洋の島々にも拡散した、最大の範囲に広がる語族である。
このオーストロネシア語族の祖形を残す台湾原住民諸部族の言語が、「温泉」を意味するウーライのタイヤル族のタイヤル語(アタヤル語)群とアミ族の言語、パイワン語群である。