読む!?温泉 第13話 温泉分析に傾けた榕菴の並外れた執念

 榕菴が『舎密開宗』外篇で、日本の温泉(鉱泉)を4種に分類したことは第12話に記したとおりです。酸泉(現在の炭酸泉)、塩泉(塩類泉)、硫泉(硫黄泉)、鉄泉です。
 多少長くなりますが、江戸後期におけるわが国の温泉化学のレベルを知るために、榕菴の4種の分類についての解説を引用しておきます。

今日とは異なる部分もある温泉(鉱泉)の種類

○酸泉は炭酸ガスを含み、これをくんで他国へ輸出する。瓶の口をあけると、発泡してあふれる。酸味があって舌にしみとおり、酔心地を催させることもある。(中略)炭酸のほかに、塩酸ソーダ、炭酸ソーダ、炭酸カルキ、炭酸苦土を含む鉱泉がある。ゼルター泉はそれである。さらに、鉄を含むものがある。ハシンゲル泉はそれである。

○塩泉には、炭酸が少なく塩類が多い。これも数種のものがある。硫酸カルキだけを含む鉱泉が多い。硫酸苦土を含むものがあり、これを服用すれば下痢をおこす。エプソム泉、セイドリッツ泉、サイドシッツ泉がそれである。また、塩酸ソーダだけを含み、全く海水同様のものがあり、これを煮つめて塩を採り、生活に利用することができる(注・信州諏訪、野州塩原、越後三島郡塩入村の鉱泉など)。またソーダを多量に含み、アルカリ性の強いものがある(注・美作湯原、真賀、羽州五色湯、奥州二本松西の湯、中の湯、東の湯、豆州修善寺など。その他省略)。また、炭酸カルキで過飽和の炭酸を含むものがある。炭酸を失えばカルキとなって浴効がなくなる。

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