”温泉教授”の毎日が温泉 第41回 抗酸化力を高める、”温泉の底力”

過去25年間で劇的に減少した野菜摂取量

 老化、及びがん、糖尿病、動脈硬化、脳卒中などの”生活習慣病”の90%は、活性酸素が原因とも言われている。活性酸素とは「物質を酸化させる強烈な酸素」で、かつては”酸素毒”とも言われた。
 毎日の生活で体の細胞の酸化、即ち錆びを防ぐ上で効果的なことは、抗酸化物質が豊富に含まれている野菜類の摂取だろう。ところが日本人の野菜摂取量は過去25年間で劇的に減少している。特に20~40歳代の若い世代の摂取量が少ない。
 一方で、アメリカ人の野菜や果物の摂取量は増え続け、がんの死亡率も減少している。

温泉が有する優れた〝抗酸化作用〟

 私どもは温泉で体内の活性酸素を効率的に除去、抑制できることを、全国各地の温泉地での実証実験で確認してきた。鉄は空気中の酸素にふれて錆びる。ところが錆びたクギを湧き立ての温泉に浸すと、錆が落ち、ピカピカになる。これを「還元した」と言う。温泉は錆びを除去したり、防いだりする優れた”抗酸化作用”を有していたのである。
 ちなみにヒトの体内で産生される活性酸素の他に、活性酸素の元となるものに、強い紫外線、放射線、過度な運動、強いストレス、不規則な生活、タバコ、農薬、食品添加物などがある。
 私たちの体内には活性酸素を無害化する酵素が備わっているが、40代から免疫力が衰え、体内の酸化状態が優位になると、がん、糖尿病、脳卒中、動脈硬化などに陥るリスクが高まる。

ウイルス、病原菌に打ち克つ抗酸化能を高める

青森県・奥薬研温泉の野趣溢れる大露天風呂「夫婦かっぱの湯」(撮影:松田忠徳)
「夫婦かっぱの湯」のシンボル(撮影:松田忠徳)

 これまでに私どもが全国の温泉地で行ってきた入浴モニターによる実証調査で、連泊や定期的に日帰り入浴することにより、血中の活性酸素代謝物が高い確率で減少することが確認できた。
 また「近い将来の疾病に打ち克つ力=抗酸化能」も、連泊や定期的な入浴で劇的に高まることも併せて確認した。これも日常的には野菜、果物の摂取や適度な運動から得られるものだ。
 ところが日本の湯治は、温泉の抗酸化力を活かした優れた”予防医学”であったことを示唆する科学的な結果が得られたのである。つまり日本人の好きな温泉で癒やされながら、実はウイルスや病原菌に打ち克つ力、抗酸化能を高めることが出来るのである。野菜を選ぶ際と同様に、優れた湯質を求める必要があることはもちろんだが――。

NK細胞を活性化、日本の温泉の底力

 しかも特に抗酸化力の強い温泉は、ウイルスやがん細胞と闘う頼もしい免疫細胞として知られるNK(ナチュラルキラー)細胞を活性化することも分かった。細菌、ウイルス等から細胞や遺伝子を守るNK細胞が活性すると、感染症やがんなどの病気に対する抵抗力が格段に高まるとして最近、注目されている。
 体を温める。熟睡する。ストレスを溜めない。ウォーキングをする。野菜でリコピン、ポリフェノールなどの抗酸化物質を摂る。ウォーキングを除いて、すべて温泉浴でカバー出来るではないか! これぞ、日本の”温泉の底力”なのである。

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