2時間余をかけて、丁寧に華清宮を見学した。あとは念願の湯浴みである。
3000年の歴史、世界屈指の名湯に入る夢が叶う


園内は人、人、人の波で、しかもほとんどが中国人のようだった。明らかな外国人は10人も認められなかった。逆に同じように人で溢れていた近くの世界遺産、秦の始皇帝の兵馬俑は90%は外国人のようだった。海外には中国の温泉は認知されていないことが一番の原因だと思われる。
華清池はまるで日本の縁日のような賑わいだったが、入浴客は他に誰もいなかった。「貴妃池」と名付けられた貸し切り風呂の入浴料は1時間で約1万円。高すぎるのだろう。中国の新興温泉の入浴料は日本円で5000円から7000円前後で、歴代の皇帝の古湯はさらに高かった。
中国では温泉の入浴料は高いが、施設はもちろん豪華だ。ところがここ「貴妃池」はベッドのある小さな休憩室は付いていたものの、施設は老朽化しており、また露天風呂もなかった。だが、はるばるシルクロードの玄関口までやって来てためらうことはない。3000年の歴史のある世界屈指の名湯に入れるのだ。半世紀に及ぶ夢が叶うのだ。
美肌、美白の透明な湯が、惜しみなくかけ流される
浅めの御影石造りの湯船から澄明な湯が惜しみなくかけ流されていた。野湯でもないかぎり、中国でこの手の風呂は珍しい。おそらくは華清宮の温泉遺構が発見される前に造られた風呂に相違ない。モデルは意外と日本の温泉だったのかも知れない。その可能性は高い。