”温泉教授”の毎日が温泉 第35回 ”傾国の美女”楊貴妃が愛した驪山温泉「華清池」(上)

「毎日が温泉」サイトの「読む!?温泉」で、中国の驪山(りざん)温泉の華清池のことにふれた際に、高校生の頃にこの国際的な名湯に憧れ、ほぼ半世紀後にその湯に浸かるという夢が実現した6、7年前のことが懐かしく蘇ってきた。

白楽天の『長恨歌』で知った古都西安の温泉

 ”シルクロード”の玄関口に位置する古都西安は、はるか昔には”長安”と呼ばれ、周、秦、漢、唐など10以上の王朝がここを都としてきたことで知られる。

玄宗皇帝と”世界三大美人”楊貴妃のロマンスの舞台となった西安郊外の華清池(撮影:松田忠徳)

 驪山温泉の華清池のことを知ったのは、高校の漢文の教科書に出てきた長い詩によってであった。作者の白居易(はくきょうい、772~848)の名は、日本では字の白楽天(はくらくてん)の方が通りがよいだろう。彼の詩は日本でも早くから愛読され、紫式部の『源氏物語』などの平安朝文学にも大きな影響を与えている。
 世界屈指の古都西安(長安)の温泉に憧れるきっかけとなった詩は、白楽天35歳のときの作品で、『長恨歌』。七言百二十句からなる物語詩である。
 「恨」とは、愛する女を失っていつまでも悲嘆に暮れる男の心情を指す。男は唐を世界最強の王朝にした第6代皇帝玄宗(685~762)、女は日本でも”世界三大美人”の一人としてよく知られている楊貴妃(719~756)。
 クレオパトラか楊貴妃か―。東西の歴史上の絶世の美女を巡って評価は分かれるところだろう。しかし彼女は当時、世界でも随一の栄華を誇った大唐帝国の貴妃であった。

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