”温泉教授”の毎日が温泉 第84回 塩原温泉の発祥地、元湯温泉と「秘湯の宿 元泉館」(下)

江戸時代の名妓にちなんだ評判の‶美人の湯”

 「元泉館」の浴場はもう1か所ある。こちらは文字通りの大浴場で、渡り廊下でつながる別棟の浴舎棟だ。塩原温泉郷の深い渓谷を流れる箒(ほうき)川の上流赤川に臨む浴舎で、3か所ある「元泉館」の浴場のなかで、もっとも開放感にあふれる。湯客のほとんどが、この大浴場だけで満足するのも頷ける。

塩原温泉の中心部にある「塩原もの語り館」。塩原ゆかりの作家たちや塩原高尾の展示コーナーがある。喫茶店、売店も併設(撮影:松田忠徳)

 渓流露天風呂を併設したこちらの浴場は「高尾の湯」と呼ばれている。名の由来は江戸時代の名妓と謳(うた)われた2代目高尾が元湯の出身であったからだという。元湯の湯に浸かって育った。高尾太夫(たゆう)にちなんだ評判の‶美人の湯”である。
 塩原温泉郷ほど、文豪、画家など文人墨客が数多くの訪れた温泉場はないと思われる。塩原温泉の中心部、傍らに足湯を併設した「塩原もの語り館」の展示コーナーに、夏目漱石、尾崎紅葉、斎藤茂吉、与謝野晶子、北原白秋、室生犀星、谷崎潤一郎、大岡昇平らの綺羅星たちとともに、2代目高尾も紹介されている。 

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