微量のラジウムを含む「北投石」による「岩盤浴」
日本の風呂の原点と考えられる「むし湯」は、奈良時代に瀬戸内地方の岩窟で誕生しました。
「岩盤浴」という言葉が日本人の間に定着して20年以上になります。最近では若い世代を中心に湿度を高めたサウナがブームです。この双方は日本の伝統的な温泉浴法「むし湯」と密接な関係にあります。
八幡平(はちまんたい)のうっそうたるブナの原生林が覆うなか、巨大な一軒宿「玉川温泉」(秋田県)が濃い湯煙を上げる渓谷だけが、爆裂火口のように黄色味を帯びた火山特有の荒々しい地肌が露(あら)わで、異様な光景です。
宿泊棟の手前に、一周30分ほどの探勝遊歩道があります。その途中の玉川温泉の湯元でもある大噴(おおぶけ)がおどろおどろしい。98度の熱湯が猛烈な勢いで地表に噴き出していて、その量がなんと毎分9000リットル。それが幅3メートルの熱湯の川となって流れ出して行くのです。
玉川温泉には微量のラジウムが含まれていて、10年間に1ミリずつ石化してわが国唯一の「北投石(ほくとうせき)」(特別天然記念物)となります。
玉川温泉が発祥の地である「岩盤浴」とは、北投石が土中に埋まっている地熱地帯(体温ほどの地温がある)にゴザを敷き、横になって毛布などにくるまりながら放射線を浴びるもの。1回に40分、これを1日に1、2度行うのが玉川温泉の湯治客の習わしです。免疫力を高める予防医学として活用するのが理想的ですが、病院から見放された人たちが、わらにもすがる思いで、最後にここに来る例も少なくないと言います。