江戸期の本草学者で、儒学者としても著名な貝原益軒(1630~1714)の代表的な著書に、『養生訓』があります。
今でいう生活習慣病や老化の防止、さらに心の健康維持に向けた指南を、儒教と中国医学に基づいて書いたものです。なにせ益軒自身、江戸中期に85歳まで生き、『養生訓』は亡くなる1年前に書かれたものですから非常に説得力があります。そのため現代にも通じる予防医学書として読み継がれ、詳しい解説付きの口語訳なども出版されています。
この本は、湯浴(ゆあ)みや温泉についても触れています。湯浴みの回数や方法、注意点などのほか、温泉については、1)温泉が効果的な病気とかえって良くない病気もあること、2)頻繁な入浴は害があるので、入浴回数は1日3回までにとどめること、3)湯に長く浸かりすぎず、かるく入浴すること───といった注意点が挙げられています。
また、湯治の期間は7日あるいは14日がよく、これを一回り(一巡り)、二回り(二巡り)ということも記されています。経験温泉学的に、湯治の一単位は1週間とされてきたのは妥当であるとしています。
一方で、「温泉には毒があるから飲んではならない」など、「飲泉」を否定するような記述もありますが、いずれも湯治に「養生」効果があることが謳われているわけです。
温泉健康楽 第22回 「 養生の薦め 」
