”温泉教授”の毎日が温泉 第79回 ‶湯畑”の周りを歩き、草津の圧倒的なパワーに改めて脱帽した(上)

完熟トマトの状態と言える‶自然湧出泉”

 3年振りに草津温泉の湯畑の周辺を歩いた。 
 わが国を代表する温泉、草津の湧出量は圧倒的で、とくに温泉力の最優先の目安となる‶自然湧出量”は毎分3万2300リットル以上、1日にドラム缶で約23万本もの温泉が湧き出ているといわれる。もちろん日本一である。

毎分約4000リットルもの大量の湯が湯畑から自然湧出し、湯畑の端で豪快な湯滝となって落下する(撮影:松田忠徳)

 湧き水のように自然に地表に湧出する温泉を‶自然湧出泉”と呼ぶ。近年、ランドサットなどによる温泉の探査技術と深度掘削技術の飛躍的な進歩により、東京、大阪などの大都市でも湯脈を得て、温泉施設が続々と誕生している。その結果、東京23区は10平方キロメートル当たりの日帰り温泉施設の数は全国一となっている。
 だが、草津のように自然湧出による温泉が本来の温泉の湧出形態であった。自然湧出泉は現在では非常に希少価値の高い温泉となり、温泉の‶質”ももちろん高い。温泉は空気にふれたり動力などで撹拌(かくはん)されることにより、酸化され質が劣化するため、自然湧出は理想的な湧出形態といってよい。
 トマトにたとえるなら、自然湧出泉は完熟トマトの状態と言って差し支えないだろう。十分に熟したまろやかな肌触りと、抗酸化力に優れた科学的な効能が期待できる。江戸時代ではもちろん、昭和初期ころまでの温泉のほとんどは自然湧出泉であった。

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