”温泉教授”の毎日が温泉 第77回 群馬の秘湯、尻焼温泉の”川の湯”で、豪快な湯浴みを楽しむ(上)

道祖神の村で平家の落人が発見した温泉

 群馬県の草津へ行く途中、寄り道をして峰々の頂にまだ雪の残る深い山道を分け入り、尻焼温泉へ向かった。尻焼温泉が湧く旧六合(くに)村は2010年に中之条町に合併されていたが、私が初めて秘湯、尻焼温泉を訪ねたときは珍しい読み方の村で、強く印象に残った。
 六合は江戸後期の医師、蘭学者の高野長英(1804-1850)が一時身を隠していたといわれる深い山国だ。シーボルトの鳴滝塾で学んだ高野長英は、幕末に開国論を唱えたが故に、六合赤岩集落の旧家湯本家にかくまってもらっていたことがあり、2階に往時のままの「長英の間」が現存する。ちなみに草津温泉は湯本氏一族によって開発、経営が始まったといわれている。
 平家落人の里、旧六合村は道祖神の宝庫で、村内に確か29体あると記憶している。道祖神は外から侵入する疫病や災害、悪霊から村を守るために、村境、峠、橋のたもとなどに置かれた守り神。大半は江戸時代に作られたもののようだ。現在なら新型コロナウイルスからの守り神である。
 全国各地を行脚した歌人の若山牧水が有名な「枯野の旅」の詩に詠んだ村はずれの暮坂峠にも、20年ほど前に通った際にひっそりと道祖神がたたずんでいたのを覚えている。
 平家の落人が発見したと伝えられる尻焼温泉は暮坂峠からも近い。位置的には草津温泉の東南。上信国境の横手山を源とする長笹川の川床や河畔に湧く温泉である。

このコンテンツは会員限定です。無料の会員登録で続きをお読みいただけます。
無料の会員登録
会員の方はこちら
テキストのコピーはできません。
タイトルとURLをコピーしました