これぞ、日本の湯宿 第4回 新川渓谷温泉郷「妙見石原荘」(鹿児島県霧島市) 天与の温泉と食へのこだわりに、真の高級旅館を知る

 10数年前に新潮社から出した『25点満点評価つき 温泉旅館格付ガイド』は結構売れた本だったが、その中で「妙見石原荘」に私は最高の評価25点満点を付け、以下のように書いている。

「妙見石原荘」の玄関と石蔵棟(左)(撮影:松田忠徳)

 「建物は平成になってからのもの。歴史があるわけではないが、その分現代的で洗練された印象を抱かせる。ロケーション、館内の雰囲気、料理共に申し分ないが、この宿の凄味はお湯にある。
 浴舎別棟になっており、そこにたどり着くまでのアプローチは感動的だ。庭の中をてくてくと浴場に歩を進める演出が心憎い。そして、そこには湯守が丁寧に客を待ち受ける。「湯守」というのは単なる掃除番ではない。お湯の品質管理専門に常駐する職のこと。
 もともとここの湯は天与の恵みといえる良質なものだが、41~42度の入浴適温にするために、九州では珍しく熱を真水に移す「熱交換器」を使っている。美肌に良い炭酸泉は鮮度が命だから、温度を下げるべくパイプを通す間に炭酸が逃げたりすることがないよう、ここまで気配りしているのだ。
 見えない部分の心遣いと見える部分に光るセンス。
 鹿児島空港から車で20分ほど、飛行機代をかけてでも、出かけるべし。」

 この評価文は現在でもほぼ変わりない。

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