日本人の癒しにつながる石段街の風情

日本人にとって、歴史の香り立ち上る古湯は、心の琴線をくすぐられる最たる場所のひとつに違いない。
数ある古湯のなかで、伊香保が好きだ。”大正ロマン”の旗手として一世を風靡(ふうび)した、画家で詩人の竹久夢二(1884-1934)が愛した古風なハイカラにひかれる。石段もそのひとつである。
同じ上州の草津温泉にとって湯畑がそうであるように、伊香保にとって、石段街は生命線で、個性でもある。
石段街を歩く。若い人たちのそぞろ歩く姿を見て、私の心まで躍る。伊香保温泉観光協会の伊東信明さんの言によると、最近の傾向だという。
「レトロ風で情緒のあるところが若者や女性に受けているのだと思います。最近は外国人の姿も目立ちます」
”日本”を感じる場ということなのだろうか。事実、私も石段街に立つたびにほっとする。石段は日本人にとって、癒やしにつながる。
伊香保関所跡から300メートル、延々360段も続く石段を上りつめると、伊香保神社が鎮座していた。
