生活の記憶と原風景を頼りに、ふるさとづくりの布石を打つ
松田 古い民家を移築すれば、往時の雰囲気を残すことができる。それは理解できますが、簡単な作業ではないですよね。技術的なことはもとより、心地よい設えをつくっていくセンスは、一体どこから得られたのかと、常々、不思議に思っているんです。部屋のつくりも全部違って、けれども「湯元 長座」らしさというか、すばらしい風情がある。小瀬会長は本当に、天才だと(笑)。
小瀬 ウチにもともとあった母屋----昨晩、食事していただいた建物を開放して、いろいろやってみたらお客さんに好評だった。どんなところが受け入れられたのか、そういうことを考えつつ、まさに試行錯誤でやってきただけです。宿の近代化という流れのなかで鉄筋の建物が増える、木造の旅館でも節ひとつない瀟洒なものが主流になる。それはそれで、受入れられる要素があるわけですが、私はそういう“常識”とは反対の方向に活路を見出そうとした。柱に臍(ほぞ)穴が開いていれば埋めて...
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