兵庫 城崎(きのさき)温泉寺(おんせんじ)の本尊十一面観音菩薩 来春から長期公開

兵庫県豊岡市城崎温泉の温泉寺本堂にまつられる「霊木伝説」で有名な本尊・十一面観音菩薩立像(国指定重要文化財)が、2009年4月から2カ月間、特別公開されることになった。
2カ月にもわたる長期公開は、開山以来初のことだという。
温泉寺は783年に道智上人が創建したとされる仏教寺院。十一面観音菩薩立像はヒノキ材を使った高さ約210センチの一木造で、これまでは毎年4月の「開山忌」にだけ公開してきた。
「霊木伝説」によれば、平安時代中期、奈良の仏師・稽文(けいもん)がこの観音像を彫っていたところ中風を患い、未完成のまま城崎温泉へ治療に訪れた。
その後、症状が回復し、温泉そばの円山川周辺を散歩していると、奈良に置いてきた未完の仏像が川に浮いているのを見つけ、近くの草庵に安置したと。
稽文は奈良に帰ろうとしたが、病気が再発。夜になって観世音菩薩が夢に現れ、「早く我を完成させよ」と告げたために城崎温泉にとどまり、この像を一気に完成させたという。
像は稽文が留守の奈良で疫病が流行り、住民が病気治癒を願って川に投げ入れたとされ、「一願成就」に御利益があると信仰を集めている。
小川祐章副住職は、「本尊の不思議ないわれに触れてもらえたら」と話している。