庄助 
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創刊特別企画 編集長対談

日本料理の本質、良さを企画・演出するという発想

松田 お湯、おもてなし、そして料理。これは、日本の宿、温泉旅館を支える大事な三つの要素です。このなかで料理----日本料理という特徴ある食事が、ともすれば形ばかりになっているケースが少なくないと思います。盛付けも彩りも美しいのですが、満足度が低い。調理場は特別な存在で、料理人には経営者でもおいそれと口を出せない。そんな旧態依然の体質が残る宿に多いようですが。

大西 確かに「料理さん」が社員とは違う立場、アンタッチャブルな職人の世界だった時代があります。私の宿では、それではサービスの質は上がらないということで、調理場も一般社員も一緒になって考え、お客さまに満足いただける料理を工夫しているつもりでしたが、ある時、札幌のフレンチレストラン「モリエール」のオーナーシェフ中道博さんのお話をうかがい、料理というものの考え方について大きなショックを受けました。

松田 札幌のフレンチ界ではカリスマ的存在の中道さんとは、ぜひとも和食についてのお話をさせていただきたいと、私も常々思っています。和食というのは、淡々と料理が運ばれきて、それを静かに味わうというのがひとつのスタイルですが、どうもこれは地味でつまらないと。特に女性たちにとっては、アペリティフから前菜があってメインメニューで盛り上げて……とクライマックスのある洋食の方が魅力的に感じる。和食の本質をきちんと理解する大切さと同時に、料理でもてなすという演出の方法が求められている気がするんですね。

大西 私が感心したのもそれに近い話で、中道さんがおっしゃるには、調理場という組織は大きく三つに分かれているんだそうです。これはフランスで三星レストランを経営するミシェル・ブラス氏のところで学んだことらしいのですが、調理場にはレシピを書く人(企画する人)、管理する人(いわゆる調理長)、作業をする人の三職能があり、これが完全に分かれている。

松田 当然、作業内容も明確に線引きされていると。

大西 そうなんです。そして、この中で最も重要な役割を担うのが、企画をする人です。この担当者は、チェーン展開しているレストラン「ミシェル・ブラス」をすべて統括して、レシピをマニュアル化していくんです。たとえばフランス料理で定番の野菜の煮込みには24種類の旬の野菜を盛込む、というマニュアルがあって、それに従うと何ともいえない味わいの料理ができる。その企画をする専任のスタッフがいるわけですね。

松田 それはいわば設計士というわけですね。和食にもそういう考え方、企画・演出を調理とはまったく別の人がやって、効果的な提供の仕方を仕掛けるということがあってもいいと思います。

大西 その一方で、調理の現場に高い素養は必要ないというんです。極端な話、管理者が一人いれば、他のメンバーは調理師免許がなくてもいいと。腕のいい料理人を何人も集めようとするからコストがかかるわけで、だから経営が成り立たなくなる。この話を聞いた時、これは旅館にも応用できるな、と思いました。

松田 淡々としてストイックなイメージがある日本料理ですが、レシピを専門に手がける人がいれば、そんな中でもメリハリのある楽しい料理になるかも知れませんね。

おおにし まさゆき  昭和30年(1955年)釧路市生まれ。東京大学経済学部卒業後、三井信託銀行を経て実家が経営する(株)阿寒グランドホテル入社。昭和64年(1989年)より代表取締役社長。平成15年(2003年)に、観光振興の功績者を認定する観光カリスマ(内閣府・野農林水産省などが認定)に選ばれる。

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